2012年10月22日

津波の痕跡2000年分 尾鷲・須賀利大池の掘削調査 


津波の痕跡2000年分 尾鷲・須賀利大池の掘削調査 

津波の痕跡2000年分 尾鷲・須賀利大池の掘削調査 

写真

 防災研究者の間で、過去の地震や津波を調べ直す動きが高まっている。東北地方では
平安時代に大津波が発生し、一部の学者は「再び大津波が来る」と警告していたが、

東日本大震災の発生までにその知見は生かされなかった。中部地方では過去にどの
ような天災が起きたのか。九月下旬、三重県尾鷲市の須賀利(すがり)大池から二千年前
の津波跡を発見した高知大の調査に同行した。

■生活と無縁の地

 熊野灘に突き出たリアス式海岸の先端にある須賀利大池。周辺に道路はなく、対岸の
漁港から釣り船に乗り、半島に「上陸」した。江戸時代には小さな集落があったというが、
今では人の生活とは無縁の地だ。

 「こうした環境と地形だからこそ、文字もない時代の津波の実態解明ができる」

 高知大の岡村真教授(地震地質学)が周囲を見ながら言う。

 津波の痕跡を探すには、海岸付近にあり、河川から水が注ぎ込まない池が適している。
普段は泥や枯れた草木からできる泥がゆっくりたまり、津波や洪水の時だけ外部の砂が
運ばれるため、砂の層がサンドイッチ状に堆積する。

調査が行われた須賀利大池

写真

 砂の層を抜き取り、貝の化石や砂の粒子の粗さなどを調べ、砂の由来が津波か
洪水かを見極める。年代は砂に含まれた木片や木の葉の炭素測定で分かる。

 「こうした条件を満たす池は全国でもかなり少ない」と岡村教授。これまで西日本で
三十二カ所の池を調べたが、二千年前の地層をはっきり確認できたのは須賀利大池を
含め六カ所ほどにとどまる。

 須賀利大池は周囲を山に囲まれ、注ぎ込む川がない。現在の海岸線から最短で
約百メートル離れ、通常は海水は入り込まない。二カ所だけ山が低く津波の際に海水が
流れ込む地形があることに着目した。

2000年以上前の巨大津波の痕跡を探ろうと行われた掘削調査=三重県尾鷲市で

写真

■古代の砂層採取

 調査方法は基本的に「人力」だ。岩盤のない池の中央部分までゴムボートで進み、
高さ十メートルの三角すい形のやぐらを組む。直径十八センチのアルミパイプの上部に

人が乗り、体重をかけて池底に差し込む。掘削機を使うと、地層がそのまま掘り出せない
恐れがあるためだ。

 パイプは水面から深さ十メートルの地点まで到達。約四十センチの砂層がそのまま
採取でき、岡村教授や助手たちが「抜けた、抜けた」と歓声を上げた。調査の結果、
砂層は二千年前のもので海の貝などを含んでおり、津波の痕跡と分かった。

■5千年前も調査

 地震の歴史研究ではこれまでに、マグニチュード(M)8・6と推定される一七〇七年の
宝永地震をはじめ、近世以降の調査は進んでいた。太平洋の溝状地形「南海トラフ」周辺

では百~百五十年ごとに大地震が起きており、そこからM8・7規模の東海・東南海・南海
の「三連動地震」が近い将来起きるといわれてきた。

 だが、内閣府は八月末、三連動地震より地震域を二倍に広げた「南海トラフ地震」の
新想定を発表。「想定外の事態」をなくすため、駿河湾から九州沖にかけM9の地震が

起きると推定した。今回の須賀利大池の発見で、二千年前に九州から東海地方まで、
内閣府の想定に迫る地震と津波が実際に起きた可能性が浮かび上がった。

写真

 
ただ、岡村教授の狙いは「もっと昔」。全国の池で四千年前の地層を調べている。
須賀利大池を調査するのも、五千年前までの堆積物が掘削できるとみているからだ。

太平洋のプレート(岩板)のずれで起きる地震は周期性があるため、四千年前の
津波跡が見つかれば、およそ二千年周期で巨大地震が起きていると考えられる。

 岡村教授は「われわれが考えている通りなら、巨大地震の発生時期が迫っている
恐れがある」と分析する。二千年の時を超えて開封された「砂の記憶」が、私たちに
警鐘を鳴らしている。

 (中村禎一郎、相坂穣、宮崎正嗣)

 
津波の痕跡2000年分 尾鷲・須賀利大池の掘削調査 
津波の痕跡2000年分 尾鷲・須賀利大池の掘削調査 


同じカテゴリー(三連動大地震、大津波)の記事画像
南海トラフ巨大地震 消える市町村145万世帯(1)
南海トラフ巨大地震が他の大地震と連動する恐れ!発生から3日間は400倍、南海トラフ後も警戒が必要に!
弥生時代後期に突如として消えた、登呂遺跡(静岡市)。その原因は、駿河湾各地を襲った大津波の可能性が高い
逃げなければ生存率はほぼゼロ【南海トラフ巨大地震津波】
南海トラフ地震、こころのかけはし、祈りの和
村井教授が緊急予測、今年後半の南海トラフ大地震を警告
サバイバル日本の大地震切迫と今後、松原照子氏等の予言
ちきゅう号は東海地震の震源域の伊勢湾沖で掘削の作業
切迫、南海トラフ地震と首都直下地震で日本の終焉か!?
三連動大地震「春までに起きる可能性」測量学権威が警告
同じカテゴリー(三連動大地震、大津波)の記事
 南海トラフ巨大地震 消える市町村145万世帯(1) (2017-04-21 07:18)
 南海トラフ巨大地震が他の大地震と連動する恐れ!発生から3日間は400倍、南海トラフ後も警戒が必要に! (2017-04-14 07:11)
 弥生時代後期に突如として消えた、登呂遺跡(静岡市)。その原因は、駿河湾各地を襲った大津波の可能性が高い (2016-11-22 13:51)
 逃げなければ生存率はほぼゼロ【南海トラフ巨大地震津波】 (2015-02-11 07:20)
 南海トラフ地震、こころのかけはし、祈りの和 (2014-09-24 19:09)
 村井教授が緊急予測、今年後半の南海トラフ大地震を警告 (2014-09-18 19:37)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
削除
津波の痕跡2000年分 尾鷲・須賀利大池の掘削調査 
    コメント(0)